お知らせ

奈良県の吉野杉ってどんな特徴があるの?製材所を訪問してみた。

2023年5月15日

本回は、日本の建物に多く使われている杉の中でも『吉野杉』について注目しました。

吉野杉の特徴や、実際に吉野の製材所へ訪問し、学んだことをご紹介したいと思います。

『吉野杉』とは

吉野杉は奈良県吉野地方に古くから植林された民有林材です。

樹脂分 がほどよく含まれ、手垢がつきにくいために、造作材としても喜ばれます。柱や造作に用いられる、赤杉とよばれる赤味の濃いものは、経年変化によっても秋目がよくのこり、高く評価されています。

 

長い歴史を支えてきた奈良の木

奈良や京都の都が栄えた時代から利用されてきた吉野の木。当初は天然木を伐っていたものの、築城などの木材需要により植林も盛んに行われるようになりました。吉野林業は400年近い長い歴史があります。

吉野で林業が盛んに行われてきた背景のひとつに自然環境があります。吉野の川上や黒滝、 東吉野辺りの山は保水と透湿性に優れているほほか、植物の育成に必要な栄養が多く含まれる土壌です。年間雨量が多く温暖な気候条件も大きな恵みとなっています。 

 

「山守制度」という独自の制度

吉野林業には「山守制度」という独自の制度があります。これは山を所有する者(山主)と山を管理する者(山守)を分ける制度。一般的な林業では日々手をかけても木が育つまでお金が入りませんが、この制度では山主に代わり山守が現場で木を育てる役割を果たします。 山主から毎年世話代をもらうことができる上、木の購入権も優先的に認められるとあって山守 は一生懸命に山を育てるのだといいます。山主と山守の厚い信頼関係により、丁寧に作り上げられた山は吉野杉や吉野桧の付加価値とされてきたのです。 

 

3倍の密度で植える「密林」

吉野林業では、密植という方法で良質な木を育ててきました。 一般的な林業では1町歩(約1万m2)あたり約3,000本植えるのが植林の目安ですが、吉野林業ではなんと1町歩8,000本から10,000本もの木が植えられます。密集して木を植えることで木の成長を遅らせ、目の詰まった木を育てるのです。 年輪幅が狭く強度のある木になる上、木目も美しいため木の質としては申し分ありませんが、太い木に育つには年月が長くかかるということになります。

 

阪口製材所の取り組み

ここからは、先日訪問させていただいた、阪口製材所さんについてお話しします。

吉野町で70年の歴史を持つ製材業者「阪口製材所」を訪ねました。

 

一棟まるごと提供

1本の木を余すことなく利用しながら、住宅一棟分全ての木材を納めるというもの。「木の太い部分、細い部分それぞれに利用方法があり、その全てをうまく使えば家が建ち、木の価値を高められる」とい仰っていました。人の都合で「いいとこ取り」をしていては山は生きられない。木を余さず使い切り無駄を出さないことは、コストダウンにもつながります。 

 

天然乾燥木材

山から切り出され水分を含んだ材木の強度を保ちながら、割れや反り、シロアリやカビを防ぐためには乾燥が必要です。乾燥炉に2~ 3週間置く人工乾燥に対して、化石燃料を使わない自然乾燥は最低でも1年。手間やコストはかかるものの、 本来持っている色艶や粘り 強さがあり、何より住まう人に優しい木になるそうです。

 

「一棟丸ごと提供」と「天然乾燥」のため、常時100棟分以上の木材を保有しています。これは、管理の手間や場所など負担も大きいですが、一定の乾燥品質を保った木材をいつでも届けられることがニーズに応えられる方法だとお話しされていました。「良いものをすぐに提供することが自分たちの義務」だと、阪口さんは話します。 

 

実際に木材を見せていただきました。ずらりと積み上げられた杉材は圧巻です。

 

丸太の状態で積んであります。皮がそのままの状態です。

 

木材を外に置いてあるのをみて、雨にあたってしまうと木材は乾燥しないではないか?と疑問に思い質問ました。それは全く問題ないそうです。雨に当たっても外に置いておけば、水分は抜けていきます。雨に打たせることで、色が平均化するという良いことがあるそうです。

 

長い乾燥によって割れが入るのを防ぐため新聞紙が貼られていました。木口割れの被害を最小限に留める為に、鎹(かすがい)を打ち込んだり、割れ止めののり(木工用ボンドを水で薄めて使用したりする)を木口周りと表面の板目部分に塗るなどします。

 

最後に

阪口さんのお話で印象に残ったのが木の本来の性質を伝えることも大切にしているということです。木は割れる、曲がる、狂う、腐る。そんな木の短所と言われる性質をきちんと説明したうえで、同時に木の良さも感じてもらう。節を見せたくない部分では綺麗な材を使い、節があっても気にならないような家の見えない部分には節のある部分をを使用して材を余らせません。

 

建材としての強度や機能性といった面だけでなく、 奈良県産材はその見た目の美しさからも称賛されています。このような良質な木材は大変な手間暇をかけて育てられ、私たちの手元に届き、木の温もりを感じられる住宅に生まれ変わっているんですね。

 

参考文献:奈良の木マーケティング協議会「奈良の木が住まいになるまで」

今回お世話になった「阪口製材所」さんのホームページはこちら

https://wood-sakaguchi.jp/

そのほかの木についてのブログはこちら

黒檀

https://www.marusei-j.co.jp/%e5%ba%8a%e6%9f%b1%e3%81%ae%e6%9c%80%e9%ab%98%e7%b4%9a%e5%93%81%e3%81%a8%e3%82%82%e5%91%bc%e3%81%b0%e3%82%8c%e3%82%8b%e9%bb%92%e6%aa%80%ef%bc%88%e3%82%b3%e3%82%af%e3%82%bf%e3%83%b3%ef%bc%89/#i-2

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