お知らせ

日本だけに生息する『杉(スギ)』の木

2021年3月30日

一概に『木』のお家と言っても、どんな木があって、どんな特徴があるかご存知ですか?

私は、調べるまで全く知りませんでした。

意外と知らないことも多く、でも知ることで家を建てるときに、その場所場所にあった『木』を選ぶことができますし、一つ一つ家に使われた木々に愛着を持つことができると思います。

経年が魅力の『木』を楽しむためにも、ぜひ、これを見て一つずつ知識が広げていき、見た目や雰囲気だけでじゃなく、自分好みの木材が選べるようになってもらえたらといいなと思います。

今回は、日本唯一の『杉(スギ)』についてお話しします。

杉の木

【樹名】

 スギ

【科名】

 スギ科スギ属

【心材の色】

 赤褐色

【辺材の色】

 白色
【産地】

 北海道南部〜九州

【加工性】

 木質が軽軟なため容易

【塗装性】

 塗装の拭き込みに注意する

【適応箇所】

 屋内での使用に適する

【主要用途】

 構造材、造作材、家具材、建具材

 

国産の針葉樹を代表する材です。

昔から建築材(構造材、造作材、建具材、家具材など)で幅広い用途に使われ、日本人に親しまれてきました。針葉樹の中でも柔らかい部類に入り、肌触りがあたたかく、水や虫にも強い材であるため、屋外の壁や戸などにも用いられています。

銘木としては、天井板はおおむねスギときまっているもののようで、高級品はうずくり仕上げ(茅の根を切り揃えたタワシ状のもので、木肌をこすり、杢目をきわだたせ光沢を出す仕上げ)をされたものが好まれます。茶室や数寄屋造りで床柱や化粧垂木に用いられる磨丸太や絞り丸太は、京都北山地方と奈良吉野地方を代表としています。

スギの天井板の木目は、柾目、板目、中杢、笹目、上杢と五つの銘柄に分けて取引されています。

落ち着いた本格的な客間には、柾目や中杢が好まれます。裏スギの北方系のスギは素直な木目で、太平洋岸の表スギは秋目の色が濃く、木目が一層鮮やかです。

 

柾目
板目
笹杢

 

 

 

 

 

 

 

 

表スギと裏スギ

スギは、中央山脈を分岐点として、日本海側に生息するスギを裏スギと呼び、太平洋側のスギを表スギと呼び、同じスギでも性質は大きく異なります。

いったん枝から着地した場所から芽を出して樹になる裏スギは、優しい木目が特徴で、天井周りも、廻り縁、竿縁は裏スギの秋田の木端柾物(こばまさ)が好まれ、敷居、鴨居も秋田のものは落ち着きがあるとされています。

また、和室の大広間などの独立柱は4面使用なので、背割れのある1本取りの芯持材は使えません。秋田スギの四方柾を使うのが最良とされており、長押(なげし)には、秋田スギの目の通った柾目が最上品とされています。

秋田スギは、裏スギの代表ですが、丹沢スギ、天城スギ、吉野スギ、魚梁瀬スギ、屋久スギも裏スギの仲間です。

参考資料:誠文堂『木材大辞典200種』

 

杉の銘木

神代杉

神代杉とは、数百年以上も土中に埋没していたもの(山が噴火して溶岩と一緒に埋まったもの)で色調の黒っぽいものを黒神代、茶色っぽいものを茶神代といい、渋い色調を珍重して天井板、落掛などに用いられます。

伊豆地方から出土したものが高く評価されたが、近年では数少ないようです。

神代杉(天井板)

 

春日杉

奈良県春日神社境内および春日山から得られる数百年生の植栽樹です。

法的規則(承和8年の勅命により神山として狩猟伐採が禁じられ、「天然記念物春日山原始林」となっている)の樹木であるから、風倒木や枯損木しか用材されません。心材は少し桃色がかった美しい赤色で、年輪は緻密です。秋目がくっきりと明瞭で笹杢と呼ばれるすっきりとした優雅な杢目は、最高級品として天井板や落掛などに用いられ、高く評価されています。柾目も美しく得難い。樹脂分がかなり多く、光沢があります。

春日杉前杢正角(角柱)

 

吉野杉

奈良県吉野地方に古くから植林された民有林材で、量的には他の銘杉類とは異なり、今後とも供給可能性は大きいです。心材は、淡紅色で、白みがかったものが良いとされています。吉野杉は樹脂分が程よく含まれ、手垢がつきにくいために、造作材としても喜ばれています。柱や造作に用いられる、赤杉と呼ばれる赤味の濃いものは、秋田赤杉よりも経年変化によって秋目がよく残り、高く評価されます。

吉野杉中杢広板(天井板)

 

薩摩杉

屋久杉ともよばれます。

鹿児島県屋久島の天然性の杉です。

原生林で有名なのが屋久杉ですが、日本のスギの原生林は、ほとんどが国有林となっております。1000年以上の木を本屋久杉と呼び、実際樹齢2000年〜4000年と推定されるものが多いです。このうち大きいものでは、樹高が50m以上になるものもあります。

多雨急峻(急斜地かつ多雨)の岩盤地帯に生えていることと、老樹であるために、年輪はきわめて緻密で、樹脂分も多く耐久性も大きく、心材は黄茶色から赤茶色で、鶉杢(うずらもく)とよばれる独特の杢目は、天井板、落掛などに高く評価されます。近年、資源保護の要請から伐採は限られ、風倒木や枯損木から得られたものが多く、樹脂分がかたまっていたり、腐れや染みが顕著であったり、欠点の目につく材が多いですが、腐れを利用した欄間も風雅で好まれてきました。

屋久杉天然杢(天井板)

 

秋田杉

秋田県米代川流域から産出され、藩政時代からの植林材です。

生育場所が広範なところから、心材の色調は鮮やかな淡黄色から淡紅色で、赤みの濃いものが多く、杢目も多様で春日杉や霧島杉に似たものも得られました。また、色調や杢目の同じものが揃えられたり、柾目の年輪幅の揃った幅広材が得られたり、伸縮性が少ないなどの特徴も挙げられます。柱や造作材としては高く評価されています。

秋田杉天然杢(天井板)

 

土佐杉

梁瀬杉(やなせすぎ)とも呼ばれます。

高知県梁瀬地方に産する藩政時代の植栽林で、心材はいくらか褐色がかった赤色で、樹脂分がかなり多く、材質として杉のなかではいくらか硬く、反りや狂いが大きいと言われています。しかし、力強い杢板は、天井板として高く評価されています。

土佐杉(天井板)

 

霧島杉

九州の霧島地方産の杉で、天井板としても床柱としても、きわめて高く評価されてきました。

心材は黄味がかった紅褐色で、春目が白っぽく、杢目が緻密で、優美な印象をもたらす希少材です。

霧島杉前杢正角(角柱)

 

挟野杉

霧島系のなかでも最も高く評価された、宮崎県挟野神社の境内林材で、現在では十数本しか存在しません。

気品のある繊細な雅致をもつが、ほとんど入手不可能。

狭野杉天然杢(天井板)

市房杉

霧島系の杉で、宮崎県・熊本県の県境にそびえる市房山の、市房神社の参道に数百年の昔に植栽されたもので、春目が白っぽく秋目が淡紅色で、おとなしやかで華やかさのある笹木は高く評価されます。数十本ほどしか残っておらず風倒木や枯損木のない限り市場に出ることがありません。

 

御山杉

伊勢神宮の境内林の杉です。

心材は黄紅色で、杢目は細かく、優美で気品のある笹杢は、天井板として高く評価されました。風倒木や枯損木で出まわることがあるかもしれない希少材です。

 

日光杉

日光東照宮や摂社並びに街道並木の杉。

春日杉に似た色調で、杢目も細かく、光沢もありますが、ただ秋目が硬いとされてきました。

風倒木や枯損木しか用材とならない材です。

 

北山杉

磨丸太、絞丸太、垂木などの丸太材として知られています。

節のない美しい木肌、本末が同じ太さで、外形が丸に近い磨丸太は数寄屋建築に欠かすことのできず、特産のシボ丸太は床柱として広く使われています。

北山天然シボ丸太

 

銘木とは、自然が作り上げた、自然な肌合いの清純な感覚と美しさであり、端正に塗り上げられたものよりも、木地のままをよしとする、少なくとも数寄道においては高しとする価値観は、人の道にも通ずるものがあります。だからこそ、人は銘木をみて美しいと感じるのかもしれません。

 

参考資料:小学館 数寄屋建築集成 銘木集

 

終わりに

弊社で取り扱う良質な木材は、奈良や静岡で産出されています。

奈良吉野の木材は、年輪が狭く密度が高いことから、強くたわみにくい特徴があります。これは、台風や地震などに耐えうる家づくりをするうえで重要な要素となっています。また、節が少なく、年輪が均一で美しいまっすぐな木目をしていることも特徴です。また、静岡の木材は、年間2000mm以上の雨、そして温暖な気候により、素直でまっすぐな木々が多く、色艶が美しい木材です。このような良質な木材を使うことで、安心で木の温もりを感じられる住まいを作り地域への貢献に繋げています。

こちらの建物では、北山杉と春日杉と秋田杉を使用しています。

 

杉の舎(写真引用元)

https://suginoyas.com/quality.htm

天然木の造形美 杢の種類(写真引用元)

https://wp1.fuchu.jp/~kagu/siryo/moku.htm

泰平木材有限会社(写真引用元)

http://www.ued.janis.or.jp/~taihei/mokuzai.html

一覧に戻る